マンダラートを初めて使ったのは、上司に「これで今年の目標を管理してみて」と言われたときでした。大谷翔平選手が高校時代に使った、あの9マスのフレームワークです。
ところが81マスを埋めるのに2時間かかり、1ヶ月後に見返すと中間目標の多くが手つかずのまま残っていました。フリーランス歴9年、200以上のツールを試してきた私が学んだのは、マンダラートは書き方よりも、埋めたあとの設計がないと機能しないということです。
本記事では基本のやり方と実際の記入例を紹介しながら、なぜ途中で止まるのかを私の失敗をもとにお伝えします。
この記事でわかること
マンダラートは正しく使えば目標の分解に役立ちますが、9マスを埋めること自体が目的になると逆効果になります。
- マンダラートの基本的なやり方と、9マス・81マスの書き方
- 仕事の個人目標を実際に9マスで埋めた記入例
- 続かなくなる3つの原因と、目標達成につなげる使い方
最終更新:2026年6月20日
マンダラートとは|大谷翔平も使った9マス思考法の基本
マンダラートとは、中心に目標を置き、それを囲む8マスに関連要素を書き出して思考を広げる、9マス形式のフレームワークです。1980年代に今泉浩晃氏が考案し、仏教の曼荼羅(マンダラ)の構造に着想を得てこの名がつきました。
最大の特徴は、9マスという枠があらかじめ決まっている点にあります。自由に発想を広げるマインドマップと違い、8つのマスを埋めようとする力が働くため、考えが浅いところで止まりにくくなります。一方で、この「埋めなければ」という圧が思わぬ落とし穴になるのですが、それは後ほど私の失敗とあわせてお話しします。
マンダラートが広く知られるきっかけになったのが、大谷翔平選手の高校時代のシートです。中心に「ドラフト1位 8球団」という目標を据え、周囲の8マスに体づくりやメンタルなど必要な要素を配置し、さらにその一つひとつを新たな中心として深掘りしていました。この「中心から放射状に分解する」構造が、マンダラートの基本形です。
曼荼羅は、中心に大日如来を置き、周囲に諸尊を配置して世界の構造を表した仏教の図像です。中心から外へと意味が展開するこの様式が、目標を中心に据えて要素を広げるマンダラートの発想につながっています。
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マンダラートのやり方|9マスと81マスの書き方を3ステップで
マンダラートの書き方は、中心に目標を置き、周囲8マスに要素を出し、それぞれをさらに展開する3ステップで進みます。9マスから始めて最終的に81マスへ広げるのが基本形ですが、最初から81マス全部を埋める必要はありません。
ステップ1|中心マスに目標を1つ書く
まず、3×3の中央マスに、達成したい目標やテーマを1つ書きます。ここで大切なのは、目標を欲張って2つ3つ詰め込まないことです。中心がぶれると、周囲のマスもぼやけます。「今期の売上を伸ばす」のように、1枚につき1テーマに絞ります。
ステップ2|周囲8マスに関連要素を書く
中心の目標を達成するために必要な要素を、周りの8マスに書き出します。たとえば中心が「新商品をヒットさせる」なら、ターゲット層、価格、販路、競合との差別化、といった具合です。
この8マスを埋める作業が、マンダラートで最初につまずきやすいところです。8つという数が決まっているぶん、無理に枠を埋めようとして似た言葉を並べてしまうことがあります。マスを埋めることより、視点の違う8項目を出すことを意識してください。
ステップ3|各要素を新たな中心にして展開する
周囲8マスに書いた要素を、今度はそれぞれ新しい9マスの中心に据えて、同じように深掘りします。これを8つ分行うと、合計81マスが埋まります。「販路」を中心にすれば、ECサイト、店舗、卸売、定期便、と具体的な施策に分解されていきます。
ここまでが基本の流れですが、81マスすべてを一度に埋めようとすると、私のように2時間かかって力尽きます。まずは中心の9マスだけ、あるいは特に深めたい1テーマだけを展開するところから始めるので十分です。
81マスは「最終的にそこまで広げられる」という上限であって、ノルマではありません。中心の9マスを埋めるだけでも、目標に必要な要素は十分に見えてきます。全部埋めることを目的にすると、一つひとつが雑になりがちです。
マンダラートの記入例|仕事の個人目標を9マスで埋めてみた
ここからは、私が実際に会社員時代にマンダラートで埋めた仕事の目標を例に、9マスがどう埋まっていくのかを具体的に紹介します。教科書的なお手本ではなく、迷いながら埋めた実例なので、自分が書くときのイメージがつかめるはずです。
中心マスと周囲8マスに実際に書いた内容
当時、上司から与えられたのは「今年の個人目標をマンダラートで管理する」という課題でした。私が中心マスに据えたのは、ライター育成のメソッドを完成させるという目標です。チームの後進を育てる仕組みを作ることが、その年の自分のテーマでした。
中心に目標を置いたあと、それを実現するために必要な要素を周囲の8マスに書き出していきました。実際に書いたのは、おおよそ次のような項目です。
| マスの位置 | 書いた要素 | 込めた意図 |
|---|---|---|
| 中心 | ライター育成のメソッドを完成させる | その年の個人目標 |
| 周囲① | 育成カリキュラムの作成 | 教える順序を体系化する |
| 周囲② | 添削の基準づくり | 属人的な指導を仕組みに変える |
| 周囲③ | マニュアルの整備 | 口頭説明をドキュメント化する |
| 周囲④〜⑧ | 面談の設計、課題図書の選定、評価シートの作成…… | 残り5マスを埋めようとした |
埋めてみて気づいた「マスの偏り」という落とし穴
ここで正直に告白すると、周囲④以降のマスは、埋めること自体が目的になっていました。カリキュラム、マニュアル、課題図書の選定は、よく見ると「教える中身を整える」という似た方向の項目です。視点を変えた8項目を出すべきところを、近い発想のものを並べてマスを埋めてしまったのです。
マンダラートの9マスは、埋まると達成感があります。しかしその達成感は、8項目が本当に異なる視点をカバーしているかどうかとは別物です。記入例として見ていただきたいのは、きれいに埋まった完成形ではなく、「埋まっているのに中身が偏ることがある」というこの感覚のほうです。
なお私はこの年、もう1枚「AIを活用したサイト戦略を作る」という別目標のマンダラートも並行して作りました。2枚同時に走らせたことも、あとから振り返ると無理があったのですが、その話は次の章でお伝えします。
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マンダラートが続かない理由|私が81マスで挫折した3つの原因
マンダラートが続かない最大の理由は、9マスを埋める作業の重さと、埋めたあとに見返す仕組みのなさにあります。ここでは、私が実際に挫折したときの3つの原因を、マンダラート特有の構造の問題として振り返ります。同じつまずき方をしないための材料にしてください。
原因1|81マスを埋めるのに2時間かかり、力尽きる
最初の壁は、単純に作業量です。私は81マスすべてを一度に埋めようとして、2時間近くを費やしました。中心の目標から8つの要素を出し、その8つをさらに8つに展開する。掛け算で増えていくマスは、考える量も掛け算で増えていきます。
マインドマップなら書きたいところだけ伸ばせますが、マンダラートは枠が固定されているぶん、空白が「埋めるべき宿題」に見えてしまいます。この埋めなければという感覚が、作業を重くしていました。書き終えたころには、肝心の「で、何から始めるか」を考える気力が残っていなかったのです。
原因2|埋めて満足し、振り返る前提がなかった
2つ目の原因は、完成したマンダラートを見返す前提が、最初からなかったことです。81マスを埋めきった達成感で、私はそこをゴールにしてしまいました。
結果として、1ヶ月後にふと見返すまで、シートは一度も開かれませんでした。中間目標の多くは手つかずのまま残り、慌てて一つひとつを雑に片づける羽目になりました。マンダラートは作った瞬間がいちばん満足度が高く、そのぶん「作って終わり」になりやすい構造を持っています。
作ったシートを定期的に見返す仕組みづくりは、マンダラートに限らず思考整理ツール全般に共通する課題です。振り返りを習慣化する具体的な方法は、マインドマップで思考整理|続かない人のためのツールと実践法でまとめています。
原因3|人に見せる前提で、本音が書けなかった
3つ目は、マンダラートの使い方そのものより根が深い問題でした。上司に提出する前提があったため、マスを埋めるときに「いいことを書かなければ」という意識が働いてしまったのです。
本来マンダラートは、自分の思考を整理するための個人的な道具です。ところが評価する相手に見せるとなると、正直な課題や不安よりも、見栄えのする模範解答を書きたくなります。書かれた8マスは立派でしたが、それは私が本当に向き合うべきことではなく、上司に見せたい自分でした。誰のために埋めるのかが曖昧になると、マンダラートは自己分析の道具から、評価対策の書類に変わってしまいます。
これら3つの原因に共通するのは、マンダラートの書き方を知らなかったからではなく、埋めたあとの設計と使う目的が定まっていなかったということです。では、どうすれば目標達成につなげられるのか。次の章で、私が後から見つけた対処をお伝えします。
マンダラートが向く人・向かない人|他の思考法との使い分け
マンダラートが向くのは、達成したい目標がすでに明確で、それを具体的な行動に分解したい人です。逆に、何をやりたいか自体がまだ固まっていない段階では、うまく機能しません。向き不向きを整理し、合わない場合の代替まで示します。
マンダラートが向いている人・向いていない人
| 向いている人・場面 | 向いていない人・場面 |
|---|---|
| 達成したい目標が1つに定まっている | そもそも何をやりたいか定まっていない |
| 目標を行動レベルまで分解したい | 自由にアイデアを発散させたい |
| 抜け漏れなく要素を洗い出したい | 項目同士の関係性を線でつなぎたい |
| 枠があったほうが考えやすい | 枠に縛られず自由に広げたい |
マンダラートの強みは、中心の目標を起点に、8マスという枠で抜け漏れなく要素を洗い出せることです。前章で紹介した私のライター育成の例も、目標自体は明確だったからこそ、要素の分解までは進められました。
合わないと感じたときに使いたい思考法
やりたいこと自体が曖昧なときにマンダラートを使うと、中心マスが埋まらず手が止まります。その段階では、枠のない発想法のほうが向いています。頭の中のもやもやをまず全部書き出したいならブレインダンプ、アイデア同士のつながりを見ながら広げたいならマインドマップが合います。
マンダラートは、数ある思考フレームワークの一つにすぎません。目標の分解にはマンダラート、発散にはブレインダンプ、と場面で使い分けるのが現実的です。それぞれの選び方はフレームワークとは?場面別の種類一覧と、迷わない選び方ガイドで全体像をまとめています。
マンダラートは紙とアプリどちらがいいか|目的別の選び方
マンダラートは、紙でもアプリでも作れます。最初の1枚は紙、続けて使うならアプリ、というのが目的別の基本的な選び方です。それぞれの向き不向きを整理します。
紙で書くのが向いている場面
初めてマンダラートを試すなら、まず紙をおすすめします。マス目を手で書いて埋めていく感覚は、思考のスピードと手の動きが近く、考えながら書くのに向いています。テンプレートを印刷するか、ノートに3×3の枠を引くだけで始められます。
ただし紙には、修正しにくい、保存や見返しが手間、という弱点があります。前章で触れたとおり、マンダラートは見返してこそ機能します。1枚試して続けたいと感じたら、アプリに移行するのが現実的です。
アプリで使うのが向いている場面
継続して使うなら、アプリやデジタルツールが向いています。修正が自由で、保存も検索も簡単なため、複数のマンダラートを管理しやすくなります。前章で挙げた「見返す前提を作る」という課題も、デジタルなら通知やリマインダーと組み合わせて解決しやすくなります。
専用アプリにこだわらず、普段使っているノートアプリの中にマンダラートを置くのも手です。私は仕事のメモやタスクをAmplenoteにまとめているので、目標管理のマンダラートも同じ場所に置いています。書く・考える・見返すを1か所に集約すると、シートが埋もれて忘れられることが減ります。
最初の発想出しは紙で手を動かし、清書と保存はアプリ、という併用も有効です。紙の自由さとデジタルの管理しやすさは、どちらかを選ばなければいけないものではありません。自分の続けやすい形を優先してください。
マンダラートを使いこなすために大切なこと
マンダラートは目標を行動に分解する優れたフレームワークですが、9マスを埋めること自体が目的になると逆効果になります。大切なのは書き方の上手さではなく、視点を先に決め、目標を1枚に1つ絞り、誰のために書くかをはっきりさせることです。私は2時間かけて埋めたシートを1ヶ月放置して失敗しました。まずは紙でもアプリでも、中心に1つの目標を書くところから始めてみてください。埋めて終わりにせず、見返す前提さえ作れば、マンダラートは目標達成の地図になります。
あわせて読みたい記事として、目標を数値で具体化したい方はOKR個人目標の立て方、思考をまず自由に書き出したい方はブレインダンプのやり方、他の思考法も知りたい方はフレームワークの種類一覧と選び方をご覧ください。
道具を増やしても、片づかないと感じたら
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