「別に困っていないけど?」

エクセルでパスワード管理している人は、みんなそう言います。
でも、エクセルでのパスワード管理は情報漏えいのリスク大です。
さらに、データの引き継ぎが難しい、使いたいときに一手間かかる、とデメリットだらけです。

本記事では、個人利用からチーム運用まで、目的やスキルに応じて適した方法を選べるよう解説します。

パスワード管理アプリおすすめ6選

目次

エクセルでのパスワード管理が危険な理由

まずは、なぜエクセルがパスワード管理に適していないのかを明らかにしましょう。
便利さの裏に潜む危険や非効率を解説します。

ファイルのパスワード保護は簡単に破られる可能性がある

エクセルでのパスワード利用は、セキュリティ上のリスクを伴います。

ファイルにパスワードを設定すれば一定の防御にはなりますが、市販ツールを使えば比較的容易に解除されるケースもあるのです。
そのため、万が一第三者に渡れば機密情報が漏洩する危険性が高まります。

さらに、エクセルにはアクセス権限の設定や履歴の追跡といった機能がなく、問題が起きても原因の特定や再発防止が困難です。
加えて、「誰が」「いつ」アクセスしたかを記録する機能もないため、一度漏洩が発生すると原因追及や対策が極めて難しく、構造的に脆弱であるといえます。

複数人での管理・共有に不向き

エクセルはあくまでもローカルファイルとしての利用が基本です。
そのため、社内やチームで情報を共有しようとすると、最新版が分かりづらくなったり、誤って上書きされるといった問題が生じます。
また、共有リンク経由で第三者に見られるリスクもあります。

バックアップや復元性に課題がある

エクセルファイルがPCにしか保存されていない場合、機器の故障や誤削除によってファイルが失われるリスクがあります。
クラウドと連携する機能もありますが、自動保存や履歴管理などが標準で備わっていないため、万一の際に復旧が難しいという課題があります。

パスワード管理ツールを使うべき理由とは?

危険性を確認したうえで、次に「ツールを導入すると具体的にどんな課題を解決できるのか」に焦点を移しましょう。

このセクションでは、エクセルでは実現できない仕組み(自動生成・履歴管理・アクセス制御など)を整理します。

使いまわしや記憶任せからの脱却

平均すると、人は100以上のパスワードを使い分けているともいわれています。
それをすべて覚えることは現実的ではなく、使い回しや単純なパスワードに頼る傾向が強まります。
使い回しや単純なパスワードが情報漏えいのリスクを高めることはいうまでもありません。

ツールを使えば、強固なパスワードを自動生成・記録できるため、セキュリティリスクを大幅に下げられます。

ヒューマンエラーをシステムで防ぐ

手動での入力・保存・更新には常にミスのリスクが伴います。
管理ツールはパスワードの自動入力や履歴管理、セキュリティアラートなどを通じて、人間のミスを前提に設計されています。

パスワードの入力間違いが大きなトラブルに繋がりかねないため、人の記憶や注意力に頼らない管理をすることが重要です。

どこからでも安全にアクセスできる

クラウド対応のツールであれば、スマートフォン・タブレット・他のPCからも安全にアクセスできます。

出先で急に必要になったとき、リモートワーク中に別端末で作業したいときにも安心です。
この利便性は、エクセルや紙の管理方法では得られません。

万が一に備えたバックアップと共有機能

自分だけでなく、家族やチームで情報を共有する必要がある場面も増えています。
ツールを使えば、誰に・どの情報を・どの範囲で見せるかを細かく設定でき、相手が変わっても安全に引き継ぎが可能です。

また、万が一の故障や紛失にも自動バックアップで対応できます。
もし日常で「最新版が分からない」「誰が編集したか追えない」といった経験が続いているなら、それはすでに仕組みの限界を示しているかもしれません。

ただし、これは「共有が一切なく、完全にオフラインで利用する」などごく限定的な条件下でのみ成り立ちます。
更新頻度が高い場合や複数人での利用が想定される場合は、むしろリスクを増やす要因となります。

pCloud Pass(総合1位|買い切りプランあり)

端末側で暗号鍵を生成・管理するゼロナレッジ設計。買い切り(Lifetime)を選べるのが特徴で、長期コストを抑えつつ主要OS/ブラウザで使えます。

暗号/E2EE クライアント側暗号(ゼロナレッジ)/AES-256/PBKDF2 等
監視/補助 オートフィル・自動保存・強力パス生成(漏えい監視の言及は控えめ)
共有/権限 項目共有・連絡先(アクセスレベル制御)
対応環境 Web/ブラウザ拡張/Windows/macOS/iOS/Android
料金目安 無料トライアル/買い切り(例:Lifetime)/サブスクあり(地域/為替で変動)
注意/制限 クラウド連携前提のため、オフライン専用用途は適合を要確認

結論:買い切りで長期コストを抑えたい個人、EU拠点のサービスを好むユーザーにおすすめ。基本を外さず、はじめての専用PMにも向きます。

1Password(王道|成熟した運用・共有機能)

アカウントパスワード+Secret Keyの「2つの秘密」で端末側に鍵を生成。Watchtowerで漏えい・弱いPW・MFA未設定を検知し、個人〜チーム運用まで安定。

暗号/E2EE 端末側で鍵導出(PW+Secret Key)/強固な暗号化
監視/補助 Watchtower(漏えい・弱PW・MFA未設定の検知)/パス生成
共有/権限 共有ボールト/権限/アクティビティログ
対応環境 主要OS/主要ブラウザ拡張/Web
料金目安 個人:$2.99/月(年払い)ほか
注意/制限 買い切りはなし(サブスク前提)

結論:初導入で迷ったらこれ。個人〜少人数チームまで「運用の失敗が少ない」王道選択。監視での「気づける設計」を重視する人に。

Keeper(企業/チーム向け|ゼロナレッジ×ゼロトラスト)

ゼロナレッジ/E2EEに加え、ダークウェブ監視・詳細な監査ログ・厳格な権限制御に強み。日本国内データセンターにも対応し、レジデンシ要件を満たしやすい構成。

暗号/E2EE ゼロナレッジ/E2EE/ゼロトラスト設計
監視/補助 ダークウェブ監視/詳細な監査ログ/ポリシー制御
共有/権限 役割/ポリシー/監査/きめ細かな権限設定
対応環境 主要OS/主要ブラウザ拡張/Web(日本DC選択可)
料金目安 個人$2.92/月〜の案内(年払い)/法人プラン別
注意/制限 機能は強力だが、個人のライト用途にはオーバースペックになりやすい

結論:監査・権限制御・データレジデンシが重要な組織に。情報システム/セキュリティ要件が明確なチームで効果を発揮。

LastPass(無料から試せる|ただし無料は種別制限あり)

無料プランで導入障壁が低い一方、「PCまたはモバイルのどちらか一方のデバイス種別」に限定される仕様。Premium移行で制限が緩和される構成。

暗号/E2EE ゼロナレッジ設計(公称)
監視/補助 漏えい監視/パスワード監視/パス生成
共有/権限 共有/権限(プラン依存)
対応環境 主要OS/主要ブラウザ拡張/Web
料金目安 無料/有料は約$3.00/月〜
注意/制限 無料は「デバイス種別を1つ」に限定。複数種別併用は不可(切替回数にも上限)

結論:まず無料で触りたい個人向け。PCとモバイルを併用したい場合はPremium前提で検討を。

Amplenote(Vault Notes前提|ノート×タスク統合)

ノート・タスク・カレンダー統合。秘匿情報は必ずE2EEの「Vault Notes」に限定(標準ノートはE2EEではない)。日常のタスク運用と一体化しやすい。

暗号/E2EE Vault NotesのみE2EE(標準ノートは非E2EE)
監視/補助 履歴やタスク連動など(PM専用ほどの監視はなし)
共有/権限 ノート単位の共有(運用設計が必要)
対応環境 Web/Windows/macOS/iOS/Android
料金目安 無料/有料 $5.84/月〜(目安)
注意/制限 パスワード本文は必ずVaultに保存。公開・標準ノートでの保存は避ける

結論:GTDやタスク連動で「続けやすさ」を重視する個人に。PM専用の監視・監査を求める用途には不向き。

Notion(非E2EE|本文格納は非推奨)

柔軟なDB・共有が魅力だが、E2EEではない(保存/通信は暗号化だがサーバ側で復号可能)。パスワード「本文」は保存せず、参照用メタ情報に限定する前提でのみ検討。

暗号/E2EE 非E2EE(サーバ側で復号可能)
監視/補助 活動ログ等(PM専用ほどの検知はなし)
共有/権限 柔軟なDB共有/権限(設計自由度が高い)
対応環境 Web/Windows/macOS/iOS/Android
料金目安 無料/有料 $8/月〜(目安)
注意/制限 本文保存は避ける。参照用メタ(サービス名/連絡メモ等)のみ

結論:Notionは「周辺情報の一元管理」には最適。パスワード本文の保存はせず、専用PMと併用する前提で。

どのアプリを選べばいい?タイプ別おすすめ

読者の状況や目的に応じて、最適な管理アプリは異なります。3タイプに分けて最適な選び方を解説します。

さらにセキュリティ強度・運用の手間・コスト感の三つの視点を掛け合わせて比較すると、判断がよりしやすくなります。

例えば、低コストで始めたいならBitwarden、高いセキュリティ基準が必須ならKeeper、といった具合に用途と条件の両面から整理できます。

個人でシンプルに管理したい場合

「とりあえず安全にパスワードをまとめたい」という人には、Bitwarden またはNotion が有力な選択肢です。

Bitwardenは、無料でも複数デバイスでの同期や安全な共有が可能で、コストをかけずに始めたい人に適しています。
一方、Notionは表形式のノートを使って自分好みにカスタマイズできるため、「自分のやり方」で情報を整理したい人に向いています。

他にも、UIが直感的なLastPass(無料あり)も、初心者にとって取っつきやすい選択肢となります。

チームや業務で共有する必要がある場合

複数人でパスワードを共有したい場合は、セキュリティと管理機能の両立が欠かせません。

1Password やKeeper は、チーム単位でのアクセス制御や履歴管理、監査ログ機能が充実しており、業務ユースにも安心して導入できます。
特にKeeperは、ゼロトラスト・ゼロ知識設計を採用しており、企業レベルのセキュリティ要件にも対応しています。

費用はかかりますが、「何かあってからでは遅い」業務パスワードには最適です。

タスク管理や知識管理と連携させたい場合

「パスワードだけを管理するのではなく、日々の業務の中で自然に扱いたい」という人には、Amplenote やNotion のような統合型アプリが適しています。

Amplenoteは、ノート・タスク・カレンダーが一体となっており、GTD(Getting Things Done)を実践している人に特にフィットします。
また、視覚的に構造を捉えたい人にはMiro も補助的に活用できます。
ノートツールは、「情報を記録する」から「活用する」へ と管理の質を一段階引き上げてくれます

パスワード管理についてのよくある質問

エクセル管理から専用ツールへの移行判断を短時間で行えるよう、要点のみを簡潔に整理しています。

エクセルでパスワード管理を続けるのは危険ですか?

危険度が高く、継続運用には不向きです。ワークシート/ブック保護は容易に解除され得る一方、ファイル暗号化は強度があっても共有・履歴・監査・権限制御が不足します。最新版の混乱や上書き事故、原因追跡の難しさが残ります。個人の単独・オフラインなど極めて限定的な条件以外では専用ツールを推奨します。

パスワード管理アプリを使うメリットは何ですか?

強固な生成・安全保管・自動入力により、人為ミスと使い回しを大幅に減らせます。漏えい警告や履歴で「気づける」設計が前提となり、事故の早期発見につながります。複数端末から安全に使え、共有範囲や権限を細かく管理できます。バックアップと引き継ぎが仕組み化され、復旧性が高まります。

個人でシンプルに始めるならどの選択肢が向いていますか?

第一候補は pCloud Pass、次点で LastPass(無料は要件付き)、Notion/Amplenote は条件付き利用です。pCloud Pass はゼロナレッジで買い切りも選べ、長期コストを抑えやすい設計です。LastPass 無料は「PC またはモバイルの一方のみ」というデバイス種別制限があり、併用には有料化が必要です。Notion は非E2EE、Amplenote は Vault Notes のみE2EEのため、本文保存運用に注意が要ります。

チームや業務で共有する場合、どの基準で選べばよいですか?

アクセス制御・監査ログ・ゼロナレッジ/E2EE・データレジデンシを重視してください。1Password は共有ボールトと運用の平易さで導入しやすい選択です。Keeper は詳細な監査や厳格な権限、国内DC対応など要件適合に強みがあります。MFA必須や共有ルールをポリシーとして強制できるかも評価ポイントです。

ノートアプリ(NotionやAmplenote)でパスワードを扱うのは有効ですか?

原則は専用ツール、ノートは補助的に条件付きで有効です。Notion は非E2EEのため本文保存は避け、サービス名や手順などメタ情報に限定します。Amplenote は Vault Notes のみE2EEで、秘匿情報は必ず Vault に格納します。タスク連動で「続けやすさ」を重視する個人に適します。

バックアップや復元の面でエクセルと何が違いますか?

専用ツールは自動保存・履歴・共有設定が前提で、復旧と引き継ぎが容易です。エクセルはローカル運用だと故障・誤削除に弱く、履歴や監査が不足しがちです。クラウド連携しても運用次第で脆弱になりやすく、事故時の原因追跡で専用ツールに劣ります。組織利用では監査可能性と責任分担(誰が何をしたか)が重要になります。

いきなり全部を切り替えなくても大丈夫ですか?

段階的移行で問題ありません。無料/トライアルで端末数・共有範囲・監査要件・費用感を検証し、移行計画を固めます。既存データはタグやフォルダ構造を合わせて取り込み、並行期間は短期に限定します。「使い続けられる形で安全に管理できるか」を基準に絞り込みましょう。

まとめ:エクセルでのパスワード管理は望ましくない

エクセルは一時的な管理や、自分一人だけの簡易的な用途では便利な手段です。

ただし、この利点が成立するのは「共有がなく、更新頻度も低い」といった極めて限定的なケースに限られます。

逆に、複数人での利用や頻繁な更新がある状況では、リスクや手間を増やす要因となるのです。

特に「共有を一切行わず、完全にオフラインで利用する」といった条件下でしか成り立たないため、一般的な運用には不向きといえます。

しかし、情報漏洩のリスク、共有や更新の煩雑さ、バックアップ体制の不備など、継続的なパスワード管理には向いていません。

一方で、専用のパスワード管理アプリやノートアプリを使えば、
安全性・柔軟性・共有性など、あらゆる面で管理レベルを引き上げることが可能です。

大切なのは、「どのツールが一番優れているか」ではなく、自分が使い続けられる形で、安全に管理できるかという視点です。

今すぐすべてを切り替える必要はありません。
まずは無料プランやテンプレートから、小さく試し、自分に合った方法を見つけていきましょう。