「振り返りが続かない」「チームの会議が形だけになっている」と感じている方は少なくありません。
現場でよくあるのは、改善点が明確にならず、同じ課題を繰り返してしまうという状態です。

しかし、こうした問題に対し、今注目されているのがKPT法というシンプルな振り返りフレームワークです。
多くの企業や教育現場で活用されており、導入ハードルの低さと効果の高さから、実践者が急増しています。

この記事では、KPT法の基礎から具体的な進め方、継続のコツ、さらに活用シーン別の実践法まで網羅的に紹介します。
実体験やツール運用例も交えて、すぐに使える形で振り返りを習慣にするヒントをお届けします。

KPT法はノートアプリ×目標管理KPT法はノートアプリ×目標管理

KPT法とは何か?まずは基本とメリットを知る

振り返りのフレームワークとして知られるKPT法ですが、ただのチェックリストで終わらせては意味がありません
まずは基本構造と背景を理解し、なぜKPTが選ばれるのかを掘り下げていきます。

KPT法の概要と3つの要素

KPT法とは、Keep・Problem・Tryの3つの要素で構成される振り返りの手法です。
Keepは「うまくいったこと」、Problemは「うまくいかなかったこと」、Tryは「次に試したいこと」を指します。

この3つをそれぞれ分けて整理することで、単なる反省ではなくポジティブな改善サイクルを作ることができます。
例えば、うまくいった点を明確にすることで自信につながり、問題点は建設的に扱えるようになります。
さらに、Tryによって次の行動が具体化されるため、考えっぱなしで終わらないのがKPTの特長です。

短時間で実施でき、チームでも個人でも使えるため、多様な場面で導入されているのです。

KPT法が支持される理由

KPT法が多くの現場で活用される最大の理由は、そのシンプルさと応用性にあります。
たった3つの視点に沿って考えるだけで、現状を冷静に振り返り、次のアクションを明確にできるからです。

また、チームで共有しやすい構造になっている点も評価されています。
K・P・Tというカテゴリがあることで、発言が整理されやすく、議論の方向性がブレにくいからです。
さらに、良かった点(Keep)を言語化することで、メンバー同士の信頼関係や心理的安全性にもつながります。

難解な手法を導入せずとも、実践しやすく、成果が得られやすいことが支持の背景にあるといえるでしょう。

他の振り返り法との違い

KPT法はPDCAやYWTなど、他の振り返りフレームワークと比べて柔軟性が高いのが特徴です。

PDCAのように順序に縛られず、YWTのように厳密なレポート形式も求められません。
また、KPTは目的に応じてアレンジしやすく、1on1や週報、研修の場などにも応用可能です。
そのため、現場のスタイルに合わせた運用設計がしやすく、形骸化しにくいという利点があります。

やるべきことが明確になる点では共通していますが、KPTはポジティブな振り返りを強く意識している点が大きな違いです。

KPT法の代表的なメリット

KPT法の導入によって得られる代表的なメリットは次のとおりです。

  • 課題が明確になりやすい
  • Tryによって行動が決まりやすい
  • Keepでメンバーを承認でき、心理的安全性が高まる
  • 継続的な改善サイクルが生まれやすい
  • 話すべきポイントが明確で、会議の無駄が減る
  • 個人でも手軽に実践できる

これらの要素は、特に「改善に意欲はあるが、何から始めればいいか分からない」チームや個人にとって、大きな推進力となります。

【▼ThinkPrompt】

振り返りがうまくいかなかった経験を思い出したとき、何が足りていなかったと感じますか?
「何となくやっただけ」で終わったことはありませんか?

KPT法を使う前に知っておきたい前提と注意点

KPT法はシンプルで実践しやすい一方、前提条件や注意点を押さえていないと、形だけの振り返りで終わってしまいます。
この章では、KPTが本来の力を発揮するために必要な条件と、つまずきやすい落とし穴を事前に把握することができます。

向いていないケースとその理由

KPT法は万能ではなく、一定の前提が整っていないと、効果を発揮しにくい場面があります。
例えば、時間や余裕が極端に不足しているチームでは、振り返りそのものが後回しになりがちです。

また、意見交換や対話が日常的に行われていない組織では、Problemを出すこと自体が心理的に難しくなることがあります。
発言が評価や上下関係に影響すると感じているメンバーが多い場合、表面的な意見しか出てこない可能性もあるでしょう。

KPTを導入する際には、まず対話の土壌があるか、改善への共通認識があるかを見極めることが大切です。

K・P・Tそれぞれの注意点

ここでは、K・P・Tそれぞれの具体的に注意点を解説します。

Keepが軽視されがち

Keepは、うまくいったことを確認する貴重な機会ですが、形骸化しやすいポイントでもあります。
「特になし」で済ませてしまうと、成功体験の言語化や共有ができず、次に活かす視点が育ちません。

また、評価としてのKeepが曖昧だと、誰にとっての成功かが不明確になり、承認の効果も薄れます。
自信を持ちたい人こそ、Keepを丁寧に言葉にする習慣が必要です。

Problemが愚痴になりやすい

Problemは課題を明確にするパートですが、単なる不満や感情の吐き出しになってしまうと逆効果です。
根本原因の探究をせず、「○○が悪い」「△△が足りない」だけに終始すると、改善の視点が育ちません。

問題提起と原因分析を分けて考えることで、建設的なTryにつなげやすくなります。

Tryが実行されないことがある

Tryは行動に結びつく最も重要なパートですが、やって終わりになりがちです。
実行者が不明確だったり、数が多すぎて行動に移せない場合、結局何も変わらないという事態になりかねません。

Tryは必ず「誰が・いつまでに・何をするか」を具体化し、次回以降のKPTでレビューできる仕組みが必要です。

継続しづらいKPTの特徴

KPTが続かない理由の多くは、「目的がぼやけている」か「成果を実感できない」ことにあります。
例えば、KPTが定例化されすぎてただやっているだけになってしまうと、振り返りの質が下がってしまいます。

また、Tryを行動に落とし込む工夫がないと、変化が可視化されず、「意味がない」と感じるようになります。
目的や成果をチームで共有し、形式にとらわれすぎない柔軟な運用が求められます。

【▼ThinkPrompt】

これまでに振り返りを継続できなかったとき、何が足りなかったと思いますか?
形式?タイミング?それとも、変化の実感でしょうか?

KPT法の正しい進め方|ステップごとに丁寧に解説

やみくもにKPTを始めても、期待した効果は得られません。
この章では、KPTの準備から実施、振り返りまでの具体的な流れを、4つのステップに分けて解説します。
初めて取り組む人でもスムーズに進行できるよう、ポイントを押さえて紹介します。

ステップ1:目的共有と場づくり

KPTを始める前に、まず何のために振り返るのかを明確にする必要があります。
目的が共有されていないと、単なる作業に感じられ、モチベーションが続きません。

また、発言しやすい環境づくりも重要です。
オンライン・オフラインに関わらず、時間配分や話す順番、ファシリテーターの役割など、事前にルールを決めておくと安心感が生まれます。

心理的安全性を確保する工夫として、付箋を使った無記名入力や、小グループでの実施も有効です。
振り返りは場が整ってこそ意味を持ちます。

ステップ2:Keep/Problemを出し合う

振り返りの核心となるのが、KeepProblemの整理です。
この段階では、質よりも量を重視し、思いついたことを制限なく書き出すことがポイントです。

オンラインならGoogleスプレッドシートやMiro、オフラインなら付箋やホワイトボードを使うと視覚的に共有できます。
無記名にすることで率直な意見が出やすくなり、役職や上下関係の影響も和らげられます。

Keepを先に出すことで、振り返り全体の雰囲気が前向きになりやすく、Problemも建設的に扱いやすくなります。

ステップ3:Tryを設計する

KeepProblemの意見を踏まえ、次に「ではどうするか?」を考えるのがTryの工程です。
Tryは新しいチャレンジというよりも、改善に向けた小さな行動と捉えると実行しやすくなります

Tryは以下のように分類すると整理しやすくなります。

  • チーム全体で取り組むTry
  • 個人が実践するTry
  • 即実行可能なTry
  • 検討が必要なTry

各Tryについて「誰が・いつまでに・どうやるか」を明確にしておくことで、アクションが実際に起こりやすくなります。

ステップ4:Tryの共有と次回への接続

KPTは一度きりで終わるものではなく、継続して改善サイクルを回すことに意味があります。
Tryを一覧で共有し、次回のKPTでその実施状況を確認するようにしましょう。

また、Tryの実施報告があることで、参加者にとって振り返りが“意味のある場”になります。
目に見える変化が実感できるようになると、次第にKPTはチームの文化として根づいていきます。

【▼中小企業のチームでのKPT実行】

ある中小チームでは、KPTを導入した当初「Tryが実行されない」問題が続いていました。
そこで、GoogleスプレッドシートにTryの内容と期限を記入し、週次で確認するルーチンを設定。
その結果、振り返りの実効性が高まり、メンバー同士のフィードバックも活性化されていきました。

実施フォーマットの構成例

KPTは構造がシンプルだからこそ、フォーマット設計で差が出ます。
チームのスタイルに合った形式を選ぶことで、継続しやすくなります。

例として、以下のようなフォーマットが挙げられます。

形式 特徴 ツール例
表形式 Keep/Problem/Tryを1列ずつ記載 Google Sheets/Excel
カード式 各要素をカードで記入・貼り出し Miro/KPTボード
文章記述型 日記や週報スタイルで記録 Notion/Amplenote

フォーマット選びは“目的”に応じて柔軟に。
KPTの本質は構造よりも気づきの質にあります

チーム・個人・教育でKPT法をどう使う?活用シーン別の実践法

KPT法は、使う人の立場や目的によってその形を変えることができます。
この章では、チーム運営、教育現場、個人の習慣づくりなど、それぞれの活用シーンでどのようにKPTを活かせるのかを具体的に解説します。

チームマネジメントでの活用

プロジェクト単位での振り返りにおいて、KPTは非常に効果的です。
スプリントの終了時や月次の定例ミーティングでKPTを取り入れることで、改善のスピードと質が格段に高まります。

特にKeepを共有することで、チームメンバーの貢献が可視化され、モチベーションの維持にもつながります。
Problemを出す際には「事実に基づく指摘」「責任追及ではなく改善前提」がルールとして共有されていることが重要です。

Tryの内容はチーム全体と個人単位で分け、次回のミーティングで必ずフォローアップするようにしましょう。
オンラインで実施する場合は、MiroやNotionなどのコラボレーションツールが活躍します。

人材育成・教育での活用

1on1面談や社員研修の場でも、KPTは有効な内省支援ツールとなります。
特に若手社員にとっては、何を学び、どこに課題を感じて、次に何を試すかを言語化することで成長実感が得られやすくなります。

具体的な導入事例は以下のとおりです。

  • 研修終了後にアンケート代わりにKPTを記入してもらうことで、受講者自身の振り返りと同時に、運営側の改善にも役立てられる
  • 1on1で上司がファシリテーターとなり、部下の言葉を尊重しながらTryに導いていくと、信頼関係の構築にもつながる

紙ベースから始め、慣れてきたらGoogleフォームやNotionなどデジタルに移行するのも一つの方法です。

個人の内省・習慣化での活用

KPT法はチームだけでなく、個人の習慣としても大きな効果を発揮します。
日々の業務の中で反省や振り返りが流されがちな方にとって、KPTは立ち止まって考える時間を提供してくれます。

特に週次レビューに取り入れると、継続的な内省と小さな改善の積み重ねが可能になります。
NotionやAmplenoteにテンプレートを用意し、Keep/Problem/Tryを1セットずつ記録するだけでも効果的です。

【▼若手マーケターの事例】

ある若手マーケターは、日々タスクに追われながらも「このままでいいのか?」という漠然とした不安を抱えていました。
朝から晩まで忙しく働いているのに、どこが成長しているのかが分からない——。
ふとしたきっかけでKPT法の存在を知り、半信半疑で週1回、自分専用のKPTレビューをAmplenoteで始めてみることにしました。

最初の1~2週間は、Keepが「特になし」、Tryは「もっと頑張る」といった抽象的な内容ばかり。
けれど3週目、Problemに「午前中の集中力が持たない」と書いたことで、初めてTryに「午前はアウトプット業務に集中、午後は会議やインプットに振り分け」と具体的な行動を設計できました。

その週から仕事の進み方が明らかに変わり、週末に振り返ったとき、「改善点を意識して動けている」と手応えを感じたのです。
Tryの蓄積が小さな成功体験になり、1ヶ月後にはKPTレビューが自分を整える時間として自然に根づいていました

KPT法を定着させるための継続ノウハウ

KPT法を1度きりで終わらせてしまうのは、非常にもったいない使い方です。
継続的に活用し、チームや個人の文化として根づかせていくためには、運用設計と関わり方の工夫が必要です。
この章では、KPT法を形骸化させずに活かし続けるためのヒントを紹介します。

ファシリテーターの役割と振る舞い

KPTの場では、ファシリテーターの存在が成果を左右します。
ポイントは、意見を引き出す場の設計進行の姿勢にあります。

まず意識したいのは、全員が安心して発言できる雰囲気づくりです。
「正解を求めない」「否定しない」「沈黙もOK」といったルールを事前に共有しておくと、発言のハードルが下がります。

また、ファシリテーターは議論の方向性を整理し、Tryにつながるようにガイドすることが求められます。
全員が話したくなるような問いかけや、言語化を手助けするリフレーズも有効です。

KPT習慣をチーム文化にする工夫

KPTがイベントではなく習慣になると、チームの改善力は自然に高まります。
そのためには、KPTの運用をルールではなく仕組みに組み込むことが重要です。

例えば、週次・月次の定例ミーティングにKPTを数分取り入れる、Tryを壁や共有ツールに掲示して可視化するなど、日常業務と連動させる工夫が効果的です。

また、ファシリテーターを固定せず、ローテーションにすることで、多様な視点と関与が生まれ、チーム全体のKPT力も育っていきます。
やらされ感ではなく自分たちの取り組みとして根づくことが、定着のカギです。

KPTが惰性にならないための視点

KPT法が「形式だけで中身が薄い」と感じられるようになると、改善サイクルは停滞します。
よくあるのは、Tryが実行されない、Keepが定型文になっている、といったケースです。

このような状態を防ぐためには、Tryの実施状況を定期的に確認し、「変化が起きているか」を可視化する必要があります。
小さな成功や工夫を共有し合うことで、KPTの価値を実感しやすくなります。

また、KPTの頻度を見直すのもひとつの手です。
週次→隔週→月次など、チームの余白に合わせて柔軟に調整しましょう。

【▼ThinkPrompt】

前回のKPTから、実行されたTryはどのくらいありましたか?
「やったつもり」になっていたものはありませんか?

ツール・テンプレートでKPT法を仕組み化する

KPTを仕組みにすると行動が変わる

KPTを定着させるには、記録・共有・継続がしやすい仕組みづくりが欠かせません。
この章では、KPTに適したツールの活用法や、おすすめのテンプレート、さらに筆者自身の実践例を通じて、使い続けられるKPT設計のヒントを紹介します。

KPTに使える主要ツール比較

KPTの実施には、紙とペンでも十分ですが、継続やチーム共有を前提にするならデジタルツールの活用が有効です。
以下の表は、主なKPTツールの特徴を比較したものです。

ツール名 特徴・強み おすすめ用途
Notion 自由度が高くテンプレも豊富 チーム・個人どちらも可
Miro 視覚的なKPTボードを自由に作成可能 オンライン会議でのKPT
Amplenote ノートとタスクを連携してTryを管理できる 週次レビュー・個人用途
Googleスプレッドシート 共有しやすく簡単に始められる チーム全体の進捗管理用

特にAmplenoteのように、KPTの振り返りをタスクとつなげて一元管理できるツールはTryの実行率を高めるうえで効果的です。

おすすめKPTテンプレートとダウンロード導線

KPTの実施をスムーズにするためには、使いやすいテンプレートがあると便利です。
ここでは、主に3つのシーンに応じたテンプレートを紹介します。

  • チーム用:GoogleスプレッドシートやNotionのテーブル形式(全員が記入しやすいシンプル設計)
  • 個人用:AmplenoteやNotionでの週次・月次レビュー向け、1ページで3項目が見渡せる構成
  • 1on1用:社員用テンプレ事前記入と上司確認進行、Tryにコメントを添える形式

現在、当サイトrでは上記テンプレートを無料でダウンロード提供予定です。
公開後は本記事にてリンクを更新しますので、ブックマークしておくと便利です。

当サイト管理人のAmplenote週次レビュー実践例

筆者自身も、KPTを週次レビューに組み込み、Amplenoteを活用して日々の業務改善に取り組んでいます。
導入のきっかけは、Tryが記録に残らず、改善が曖昧になってしまうという課題感でした。

最初はシンプルに、今週のKeep/Problem/Tryを1ノートにまとめるだけの運用からスタート。
Amplenoteのタスク機能と連携することで、Tryがそのまま「やるべき行動」として整理され、翌週のレビュー時にチェックがしやすくなりました。

まとめ|KPTは「振り返る力」を育てる日常の習慣

KPT法は、Keep・Problem・Tryというたった3つの要素で、自分やチームの行動を前向きに変えていけるシンプルかつ強力なフレームワークです。
単なる反省ではなく、「何を活かし、何を変え、次にどう動くか」を明確にすることで、改善の実感と成長の感覚を得ることができます。

重要なのは、形式にとらわれず、自分やチームに合った方法でKPTを“使いこなす”ことです。
最初から完璧を求めず、小さなTryから始めてみることが、継続の第一歩になります。

KPTは「1回やって終わり」ではなく、「振り返りがある日常」をつくるための入り口です。

KPTをもっと活かすために|次のアクションは?

✔ この記事を読んだ次のステップ

  • 気軽に1人KPTをやってみる(Amplenote/NotionでもOK)
  • この記事をブックマークし、週1で見返してTryを更新
  • チームでのKPT導入を提案する or 試してみる
  • テンプレートを活用して運用を仕組み化する

当サイト筆者からのひとこと

筆者自身も、振り返りが苦手でした。
ですがKPT法を通じて、考える時間ではなく行動を整える時間に変えることができました。

KPTは習慣になったとき、思っている以上の成果をもたらします。
もし今、改善のヒントを探しているなら、ぜひKPTを自分ごととして試してみてください。