UpNoteのデメリットを整理する理由と前提知識
UpNoteは評価が高い一方で、向き・不向きが分かれます。
本章では、導入前にUpNoteがご自身にマッチするか否かを判断するために、人気の背景とよくある選定ミスを整理して解説します。
UpNoteの基本仕様と人気の理由
UpNoteは、ミニマルなデザインと動作の軽快さが特徴のノートアプリです。
買い切り型プランがある点や、日本語でも直感的に操作できるインターフェースが支持を集めています。
具体的には、以下のような特長があります。
- 動作が非常に軽く古いデバイスでも快適に使える
- UIがシンプルで初心者でも迷いにくい設計
- マルチデバイス同期に対応(Windows / macOS / iOS / Android)
- 有料プランは買い切り制もありランニングコストを抑えられる
このような特徴により、他のノートアプリに不満を感じていたユーザーの乗り換えの選択肢となっています。
具体的には、「Notionは重くて使いにくかった」「Evernoteは機能が多すぎる」と感じていたユーザーなどがUpNoteの主な利用者層です。
一方で、このシンプルさがかえってできないことの裏返しでもあるため、導入前の確認が不可欠です。
よくある選定ミスとその背景(ストーリー)
Aさん(32 歳)は、都内を飛び回る法人営業マン。月末の月曜、満員電車の中で揺られながらスマホ片手に Google Keep を開き、午前 10 時の商談で提示する見積もり条件を探していました。
スクロールしても検索ボックスにキーワードを打ち込んでも、肝心の PDF 添付メモが出てこない。
焦る指先は汗ばんで滑り、「次は新橋〜」というアナウンスがスピーカーから流れた瞬間、「あの資料どこだっけ?」と心拍数が跳ね上がりました。
昼休みに同僚がすすめる UpNote をダウンロード。
軽快な立ち上がりとミニマルな UI に「これだ!」と感激し、週末にかけて 200 本超のメモを一気にインポートしました。ところが翌週、クライアントから「先月提案したプラン C の裏付けデータを再送して」と連絡が入ったとき、画像化した Excel 表をどう検索してもヒットしません。ようやく気づいたのは、UpNote が画像内文字を全く読めないという事実。
さらに案件タグを「#A社」「#B社」と付けたものの、階層で絞り込めないせいで「#A社‐提案」「#A社‐見積」など細分化タグが際限なく増殖。タグ一覧はまるで郵便受けのない長屋の表札のように雑然と並び、目的のノートを掘り当てるまで 3 分以上かかるようになりました。
ついに決定打となったのは金曜 19 時。取引先との打ち合わせメモを会社 PC で更新し帰宅後にスマホで確認すると、同期ラグで半分しか反映されておらず、朝までに作るはずの提案書の骨子が消えていたのです。翔太さんは深夜 1 時、コーヒーの冷めた香りの中で「軽さに飛びついた自分が甘かった…」と嘆きながら、次の候補アプリを検索し始めました。
この経験が教えてくれたのは、最初の軽快さより半年後も迷わず探せる構造」こそがツール選定の決め手だということでした。
UpNoteのデメリットを客観的に解説
軽快なUpNoteにも、業務用途では見逃せないデメリットがあります。
この章では、UpNoteの弱点について客観的に整理し、ビジネス利用や実務での注意点を明確にします。
導入後に「こんなはずではなかった」と後悔しないための事前チェックに活用できます。
添付ファイルと画像圧縮の制限
UpNoteは添付ファイルに制限があり、画像も自動で圧縮される仕様になっています。
これは資料共有や長期保存が必要な業務において、想定外の情報損失を招くリスクになります。
無料版では添付自体ができず、有料版でも最大ファイルサイズの上限(非公式には約20MB前後)が存在します。
さらに、画像は自動的に圧縮され、画質が低下するケースもあるため、図表やスクリーンショットを扱うユーザーにとっては注意が必要です。
例えば、クライアントから受け取ったPDF資料や詳細な設計図を保存しようとした際に、容量オーバーや画質低下が原因で情報が欠損した、という声もあります。
軽快さと引き換えに、ファイルの扱いには一定の割り切りが必要です。
▷参考:UpNote公式ドキュメント)
https://getupnote.com/
OCR・検索機能の不十分さ
画像内の文字やPDFの内容を検索できないという仕様は、情報検索の効率を下げる原因となります。
特に業務用途では、蓄積したノートから瞬時に情報を引き出せるかどうかが、ツール選定の分かれ道になります。
UpNoteでは、テキストベースの検索はスムーズですが、画像内の文字(OCR)やPDF内の全文検索には対応していません。
OCR非対応ということは、PDFに検索をかけられないということです。
ページ数の多い資料から必要個所を探そうとする際にかなりの時間を要してしまうことも。
OCR対応が必須であれば、Evernote(画像・PDFのOCR検索対応)やAmpleNote(PDFインデックス化)の方が適しています。
検索性を重視する場合は、導入前に用途との適合性を十分に検討する必要があります。
タグの階層化やノート間リンクの弱さ
情報を構造的に整理したいユーザーにとって、UpNoteのタグ機能はやや物足りないと感じられるかもしれません。
現在のUpNoteでは、ハッシュタグは使用できますが、タグの階層化(入れ子構造)は未対応です。
また、ノート間リンクは可能ですが、双方向リンクやグラフビューのような深い構造的ナビゲーションは搭載されていません。
Zettelkasten的な思考整理やアウトライナー的な使い方を想定しているユーザーには不向きです。
Zettelkastenとは、アイデア同士をリンクして思考を深めるためのノート術です。
詳細は、以下で解説しています。
▷参考記事:ツェッテルカステン徹底解説|思考を繋ぐノート術とツール4選
整理機能の柔軟性を求める場合は、AmpleNoteのタグ機能や双方向リンク、Obsidianのリンク構造の方がマッチします。
書いた後に思考を育てたいと考える人ほど、情報のつなぎ方に注目する必要があります。
共同編集・同期精度の限界
UpNoteは個人利用には優れたアプリですが、複数人での同時編集やチーム運用には向いていません。
リアルタイム共同編集には対応しておらず、他者との編集内容が同期で上書きされるリスクもあります。
具体的には、UpNoteでノートを共有した場合でも、閲覧用リンクでの共有に留まり、同時編集やコメント機能は搭載されていません。
業務での議事録共有やレビュー作業には、NotionやGoogleドキュメントの方が適しているといえるでしょう。
また、同期精度は基本的に安定していますが、ノート数が増えると一部でタイムラグが発生する報告も見られます。
ビジネスでの利用を想定する場合は、単独使用を前提にした方が無難です。
バックアップやエクスポートの仕様
UpNoteはMarkdown、PDF、HTML形式でのエクスポートに対応しているものの、完全なバックアップとしての柔軟性には限界があります。
特に、他のノートアプリへの移行や長期保存を意識するユーザーにとっては不安材料となる可能性があります。
例えば、すべてのノートを一括でMarkdown化して構造的に保存するにはやや手間がかかる設計であり、画像や添付ファイルとの紐付けもやや不透明です。
また、定期的な自動バックアップやクラウド外へのデータ保存機能は、現時点では搭載されていません。
EvernoteやAmpleNoteのように、明示的にインポート/エクスポート設計がされているアプリと比べると、移行性・保守性の観点では一歩劣ります。
UpNoteの代替ノートアプリを選ぶ際の設計視点
UpNoteが合わないと感じたとき、次にどのアプリを選ぶかは悩ましい問題です。
この章では、単なる機能比較にとどまらず「自分にとっての使いやすさ」を軸にアプリを選ぶ方法を紹介します。
重要視する機能をマトリクス化する
ノートアプリの比較は、感覚ではなく何を重視するかに基づいた整理が不可欠です。
そこで有効なのが、選定軸をマトリクス化して整理する方法です。
例えば以下のような項目をY軸に、優先度(高・中・低)をX軸に配置することで、自分にとっての「外せない条件」が見えてきます。
- ファイルの管理(添付/検索/容量)
- ノートの整理方法(タグ/階層構造/リンク)
- 操作性(UIのわかりやすさ/日本語対応)
- 拡張性(テンプレート/外部連携)
- 料金形態(買い切り/サブスク)
マトリクス化することで、好みの問題と実用上の必須条件を分けて判断でき、アプリ選定の迷いが減ります。
試用期間で確認すべき3つの観点
気になるアプリを見つけたら、短期間でも実際に使ってみることが重要です。
その際、以下の3点を意識して確認しておくと、使用後の後悔を防げます。
- 書き心地: 日本語の入力やリッチテキスト操作が快適かどうか
- 閲覧性 :ノートの一覧性/検索性/ビュー切り替えの柔軟性
- 拡張性 :インポート・エクスポート機能/外部ツールとの連携可否
この段階で違和感を覚えるようであれば、長期的に使い続けるのは難しい可能性があります。
軽さと継続性のバランス
シンプルなUIだから続けられると思っても、数ヶ月後にはできないことが多くて不満に変わることがあります。
逆に、多機能すぎて疲れると感じたアプリも、設定やテンプレートを調整することで快適になる場合もあります。
大切なのは、軽さと継続性が自分の作業リズムと合っているかを見極めることです。
特に継続性は「めんどくささの少なさ」と「思考の流れを止めない操作性」に直結します。
数日だけでなく、1〜2週間は使ってみることでそのアプリとの相性が見えてきます。
#StoryBlock: Notionで挫折→UpNote→Amplenoteに落ち着いた実例
フリーランスの30代女性は、情報整理のためにNotionを導入したが、操作が煩雑で挫折。
次にUpNoteに乗り換えたが、タスク管理と日付管理が分離してしまい運用に違和感があった。
最終的にAmplenoteにたどり着き、GTD方式のタスクとメモを統合して管理できることが決め手となった。
「記録が“行動”に変わる感覚があり、ようやくツールが自分に合った」と話している。
GTDについては、以下で詳しく解説します。
▷参考記事:GTDとは?タスク管理を超えて思考の整理術として使いこなす全知識
まとめ:UpNoteのデメリットを知った上で、納得の選択を
UpNoteは優れたノートアプリですが、すべての人にとってベストとは限りません。
本章では、これまでの内容を整理し、納得して選ぶためのチェックリストと次の一歩を提案します。
本記事の要点とチェックリスト
UpNoteの選定で後悔しないために、次の観点をおさらいしておきましょう。
- UpNoteの魅力: シンプルで軽量・直感的操作・買い切りプランの安心感
- 主な弱点: OCR・タグ階層・共同編集・エクスポート制限など
- 比較対象: Notion(柔軟性重視)、Amplenote(GTD重視)、Obsidian(思考整理重視)
- 選定視点: 書き心地/検索性/運用継続性/インポート・エクスポート確認
これらを踏まえたうえで、自分にとっての「必要最低限かつ十分な機能」が備わっているかを確認することが重要です。
今後の代替プランの考え方
1つのアプリに決めきれない場合は、以下のようなステップで検討してみてください。
- 候補のアプリを3つ選定し、実際に使ってみる
- 各アプリで同じ目的のノート(例:業務記録、アイデア、ライフログ)を作成
- 1〜2週間の使用感で「続けられそうか」を評価
- 1つに絞って移行し、設定・テンプレートを整備して本運用へ
実際に触ってみないと見えてこない使い勝手や相性があります。
迷っている段階では、完璧なアプリを探すよりも、行動しながら見極めることが近道です。
【更新履歴】2025年6月9日更新